3.もう遅くとも

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 不器用だからと避けていた刺繍もやってみよう。 「もう受け取ってはくれないかもだけど……」  それでも、今までの私から変わりたい。 “コルンが私を好きだったなら、こんな書類を用意しているはずはない。それに私の言葉にだってもっと他の言葉をくれたはずだわ”  愛することはない、なんてセリフにあっさりと納得して受諾してしまったのだ。  きっとそういうことなのだろう。 「だからせめて、好かれる努力をしたいわ」  自分磨きならコルンへ迷惑はかけないし、騎士として努力している彼に釣り合うようになりたい。  そうして少しでも成長したら、もう一度だけ彼に告白しよう。 “振られてしまったらちゃんと諦めてこの書類も提出するわ”  だからもう少しだけ、彼の婚約者でいさせてください。  自分勝手だとはわかっているけれど、私はそっと婚約破棄合意書を仕舞ったのだった。    それからの私は頑張った。  なんだかんだで面倒見のいいエリーに勉強を見て貰い、先生へも積極的に質問をしに行った。
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