5.そんなパターン要りません

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5.そんなパターン要りません

「……その努力の結果が、これだとは」  今日の勉強を終えた私は、私室へと帰り机に置かれていた何通もの手紙を見てげんなりとする。 “まさか私にこんなに沢山の婚約申込が届くなんて”  完全に想定外である。 「まだ! 私は! コルンの! 婚約者よ!!」  苛立ちのまま置かれた手紙に文句を言うが、当然手紙が返事をしてくれるはずもなく、私の虚しい叫びだけが部屋へと響いた。 「どうなされますか?」 「お断りの返事を書くわ」  何度も同じことがありもうわかっていたからか、私の返答を聞いてすぐに侍女がレターセットを差し出してくれる。 “前ならふざけないでって破り捨ててたんだけどね”  今の私に婚約者がいるのかは怪しいラインだ。  書類上はまだ婚約中だが、彼から渡された婚約破棄同意書はこの机の引き出しに入っている。  もちろん婚約申込をしてきた相手はそんな事情は知らないだろう。  ただ単に、噂を聞いて送ってきただけ。  その噂というのが―― 「私が男漁りをしているだなんて!!」 「言い方変えなさい、この馬鹿」 「だってエリー、私まだ婚約中なのにぃ」 「最終勧告受けてるけどね」
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