7.溢れる本音

2/7

24人が本棚に入れています
本棚に追加
/48ページ
“姿を確認するまでは引き金を引くのは危険よね”  茂みにいた私が獲物と間違われたように、万が一ということもある。  そう思って狙いを定めたままジッと様子を窺っていると、ゆっくりと木の後ろで何か動いた。  ――来る!  ごくりと唾を呑んだ私の目の前に現れたのは、シカ……では、なく。 「子グマ……?」  思っていた獲物と違い一瞬きょとんとしてしまうが、小首を傾げたような子グマの表情に思わず口角が緩んでしまう。 “可愛いかも”  いくら馬の蹄の跡で見えづらくなっていたからって、子グマの足跡とシカの足跡を間違えるなんて相当お馬鹿だったと自身に呆れつつ、このことを後からエリーに報告したらどんな反応をされるのかしら、なんて。  他の獲物が見当たらなかった理由にも、そして子グマが一頭だけでこんな場所にいるはずがないなんてことにもその時は気付かず、私は呑気にクロスボウを下ろし子グマの前にしゃがみこんだ。 「こんにちは、こんなとこでどうしたのかな? お母さんとははぐれちゃった?」
/48ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加