ブラックアウト

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 日本国民は約1億5000万人、しかし日本国内で稼働しているスマートフォンの数は、その2倍に及ぶと見積もられている。  それだけの精密機器が、およそ1時間にわたり、完全に沈黙してしまった。  たった1時間――されど1時間だった。  全国の駅や商業施設、携帯端末ショップに家電量販店に、真っ黒な画面を突き出しながら、叫び声をあげる老若男女が溢れた。当然、地元警察が出動する事態になった。  死人が出なかったのは幸いだ……とはいえ、東京都だけで、怪我人は数百人に及んだ。  早急に、この謎のブラックアウト事件の原因を解明しなければならない。 「ただいま原因を調査中であります。誠に申し訳ございません」  そう言って、関係各社の偉い人々が、ただ頭を深く下げる。  その映像が、ネットニュースで駆け巡る。国民の怒りの声や、騒動の原因についての勝手な憶測もまた、同様に。  ブラックアウト騒動から24時間以上が経っても、原因の究明は進まなかった。  国民の怒りや疑念は膨らむばかりで、けれどどうしようもなく時は進み――そして、2度めの一斉ブラックアウトが起こる。  『2度め』が起こった日、東京都内の最高気温は、43.7度だった。
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