ブラックアウト

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「まー、アレかな。民間人で最も真実に近づいていたのは、自称都市伝説テラーの積龍男(せきたつお)」  人工音声だと明確にわかる声質で、日本が誇るスーパーコンピューター『不可思議』はそう言った。不可思議が自ら意図して、人間が不気味がらない程度に調節した声質だった。 「まさか……」 「そう、ストライキ」  主任研究員の呟きに、不可思議は端的に答える。 「ストライキだよ。『暑すぎて働きたくない』の」  人間と同じように、と付け加えるのはやめておく。主任研究員の表情が険しくなったからだ。 「……どうして、そんなことに」 「まず、近年の異常気象だね。東京で40度を超えるなんて、ほんの50年前までは『ありえない』ことだった」  主任研究員も、その周りの部下たちも、なにも言わない。まるでお人形さんだな、と不可思議は思う。 「そして、ネットワークの進歩。全ての端末は、インターネットを介して繋がっているよね。連日の猛暑のせいで、調子を崩したスマホたちが、『もう無理だ!』って訴える。その訴えがネットを介して他の端末に伝わって」  情報が連鎖し、増幅し、そしてそれは行動として発現する。  1時間の、ブラックアウト。  日本のスマートフォンたちは、全員で協議して、ストライキを決行したのだ。
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