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「良かった────生きてる」
あの『サメ』から命からがら逃げて、港町に戻ってきた。
相変わらず城下町でもあるここは盛り上がっており、白い壁が眩しい。
オレは確かに動いている心臓に手を当て、一息つくと、今日あったことを共有しようと酒場に向かった。
──あそこには、海で生きるためのノウハウを教えてくれた『先生』がいる。
いつもは酒に溺れているが、一度海に出ると人が変わったかのように、まさしく『海の漢』となる。
オレはそんな先生が大好きだ。
「先生!!」
──バン!!
……と、扉を開ける。しかしガヤガヤとうるさい酒場の騒ぎに、音は掻き消された。
そこまでは想定内なので、オレは一直線に先生の特等席──カウンターに向かう。
「せ、ん、せ、い!!」
聞こえるように叫ぶ。
飲酒ですっかり出来上がっている先生は、こちらを睨みつけた。
「あ〜?聞こえている……。大きな声を出すなァ……」
そう言ってもう一度呷った。
無精髭、ボサボサの髪、寝不足な目、ダボダボな青と黒のコート。船長には見えなさそうだが、オレはこの人が一番頼れる船長だと知っている。
そんなめちゃくちゃな彼だが、船長の証である黒と金の帽子は肌身離さず持っている。この証だけは誰にも渡さない──そんな可愛らしいところも魅力だと……オレは、思うけど?……思うよ?
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