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「すっ、すいません!」
「あァ、こいつにもウイスキーを……」
「では一杯だけ……って違うんです!出たんですよー!」
「何が?」
獲物へ向ける視線がこちらにも向けられる。こういう話で、自分に持ちかけられるとなると大抵が『デカくてヤバい魚が出た』というものだ。彼もそれがわかっているのだろう。
「こーんな、おっきな黒い背ビレのサメが!」
「……………………サメ、だと?」
「ひえっ!?」
声が低くなる。
そりゃそうだ、なんたってここには海水浴場もある。サメの駆除は定期的にやってるし、そんなバカデカいサメがいたなんてわかればどうなるか考えるまでもない。
それに毎日海の男が狩りに出ている。なのにビッグモンスターが今まで息を潜めることができていたなんて、これっぽっちも考えられない。
オレは初心も初心のド新米だから知らないだけかもしれないが、もしかすると────いや、ありえない!だってあの話は御伽話なんだろう?実在するなんてこと、あっちゃならないだろ!
「サメはここにはいない……。いてもこの海域のは狩り尽くされているはずだァ……」
「でもいたんです!こんなくらいに“黒くて”、“大きくて”、“速い”サメが!!」
「…………………………」
先生はこちらを見た。
──鋭く、青い眼だ。
誰よりも海を見てきたから青いとも噂されているが、本当だろうか?こういうのって生まれつきなんじゃないか?とファンタジー好きなオレは珍しく思うが、まぁ海の男ほど幻想好きな人間はいない。そういうことにしておこう。
「…………それは────」
「?」
「──本当に、サメかァ?」
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