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「くそッ!今から港に戻るには──あのルートか!」
近くには養殖場がある。最近は天然のマグロが大量発生しているので養殖場に船の姿は無いが、オレは知っている。海の中に網を張るため、『ブイ』が浮いている。その『ブイ』に引っかかるようなルートに誘導すれば……ハハ!ゲームオーバーだ!!
「あ?向こうから船が来てるな……。それじゃああっちに行かなくては……だが、あそこは……」
そうだ、迷え迷え!
ここから先は航路から外れている。
『航路以外を通る』ことを、誰よりも恐れているのは人間だ。
昔はよくそういう奴がいたけど、最近は全く見なくなった。何か都合が悪いことを上層部から言われたのだろうか。それとも何かがあったから行かないようにしているのだろうか。
ま、ただのシャチにはわからないし、人間のことなんて興味無いが。
それでも『人間が恐れている』のであれば、ちょっとばかし遊び道具にさせてもらっても良いだろう?
「うっ……!行きたい方向から向かってくる!くそっ、なんでこんなことに!」
いいぞいいぞ!そのままあっちに行け!
どうなるか見せてみろ!
──ブーン!!
「!!」
高めのエンジン音が聞こえる。少数の人間が乗ることができる、小さめの船だろう。遊ぶ用なのか?それにしてもまた人間が増えるのか。まぁそれも一興だろう。
「今だ!!」
……はぁ?
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