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「うわっ!!」
「ちょっと!危ないわね!!」
10メートル以上は離れているようだが、ブイと航路ギリギリを狙った結果、かなりシビアな通り道になったようだ。
そのせいで小さな船は大きな波でゆらゆらゆらゆら転覆しそうになっているが、オレにはそれが面白いものに見えた。
漁船の人間……あいつ絶対に地獄に落ちるぞ。特に恨みで。
「待って!……あれ、何?」
どうにか転覆に耐えた、船に乗っている女がこちらに気付く。さっきまではネイルとやらをやっていたようだが、事態の大変さに理性が勝ち、やめたのだろう。
──だが、遅い。
「背ビレか……?何かが追ってくるぞ!勘弁してくれ!!」
──ブ……ボボ……ブ……。
「クソ!こんな時に!」
「ちょっと!早くしなさいよ!!」
再び発進しようとするが、なかなかエンジンがかからないようだ。
オレはというと、まだ背ビレを出して状況を楽しんでいた。
自分を偽るというのは楽しいことだ。むしろこの方が獲物を確保するのに向いてるんじゃないのか?油断してくれるからさ。……え?サメは怖いもの?それはそうだな!
──ブブ……。
距離はあと1000メートルほど。
1分もあれば確実にエンカウント圏内だが、オレは優しいので、かなーーーーりのんびり泳いでいる。
さっきの漁船は放置するしかなさそうだが、こいつらは海にゴミを捨てそうなので何をしたっていいだろう?
オレはイノセントだ。
かわいいかわいいシャチ。
水族館の人気者。
……天然のシャチはどうかは知らないけど。
オレは────まぁ、狡猾な方だと思うよ。
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