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今になって、別のコンビニにハシゴすればよかったと悔やんだ。
「……なんかおかしい」
歩いても歩いても、目先の風景が変わらない。同じような外観のビルが自分についてくるように流れていた。立ち止まって空を見上げる。星が点々と輝き、月がどこにもない。
ややあって、首筋にずしりと重いものを感じたひかるは振り返った。
数メートル離れた地面に、赤黒い大きな円が光っている。円の直径は車がすっぽり入るほどで、文字めいた模様や幾何学模様が浮かんでいた。
光は一段と強まり、円の中心から大きなトカゲに似た生物が顔を覗かせた。
その巨大な生物には手足がない。蛇のように地中から這い出て、舌を垂らしていた。
胴長の怪物は奇声を発し、禍々しい眼でひかるを威嚇する。
(こっちに来る——!!)
標的にされている。しかし逃げたくとも恐怖で身動きがとれない。
もう駄目だと思った瞬間、紫電一閃、すぐ横を人影が走った。
闇の中を一筋の光線が射抜き、怪物の体をまっぷたつにした。たちまち胴体は激しく自然発火する。その炎は奇怪で、周囲のものを熱したり燃やしたりすることはない。やがて炎はおのずから鎮火し、赤い円も消えた。
ひかるは足に力が入らなくなって、膝から崩れ落ちた。暗がりの向こうからは、人が歩いてくる。
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