失われた王女

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 反論すると、ゼノはふうっとため息を吐いてから説明をまくしたてた。 「一つ目、ネブラとヘルブライトの狙いはあなただ。襲われたという事実は、ひるがえって姫であることの証明になる。どうやら彼らも姫のオトラを感じることができるらしい。  二つ目、あなたがルシル王女でなければ、ディーはあなたを助けるために剣を抜かない。  三つ目、さっき僕が使った魔法は、物事の仮の姿を暴き、真の姿を出現させるものだ。つまりこの少女はかりそめなのです」 「……ムリ、一個ずつ説明してほしいんですけど。早すぎて全然わからない」  ひかるは思考停止を起こしてそう言った。  このゼノという青年は雄弁もさることながら、物腰が柔らかく世話を焼くことはやぶさかでないようである。にこりと微笑み「いいでしょう。何がわからない?」と首を傾げた。 「えっと、最初から全部」  忍びない小声でひかるは上目を向けた。 「ほう、ルシル。この感じは懐かしいよね。やはりあなたを教育するのは骨が折れる」  ゼノは悠然と言ったが、ひかるは彼の麗しい笑顔から、そこはかとなく憤懣やるかたないといった所感を受け取った。同時にふと、彼と心の距離が急に近くなったような気がしておもんぱかる。自分は人見知りするほうで、打ち解けるのにも時間がかかる。なのにゼノとは、あけすけに会話ができていた。まるで以前からお互いを知っていたかのように。
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