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ディーの剣の腕前は天賦のものだったという。まだ年端もいかぬ少年時代から腕が立つと噂され、元はフィル王子の守護官だった。
ゼノの話を聞いたひかるは、助けてもらった時を思い起こして言った。
「確かに強かった。国王から指名されるのもうなずけるよ」
剣を振るう姿はほとんど知らないが、昨夜の佇まいや身のこなしから天賦の才というのが大袈裟でないことはわかる。
「彼の強さには秘密があるんだ」
「ひょっとしてオトラの力?」
ゼノはしばし黙り込む。常軌を逸した世界の話だけに、ひかるは続きを待つよりほかない。そして彼は衝撃的な事実を補足した。
「ディーは剣士としての肉体に、禁断魔法によって生成されたオトラを移植させられたんだ。禁術の触媒として使われたのが王女の髪だった。毛髪には個人の強力なエネルギーが宿っているから、魔術に用いることがあるんだよ。ディーの人工オトラは、ルシルが危険にさらされていることを離れていても感知できるように、特殊生成されたものだ」
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