さよならの向こうへ

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 ゼノの杖の先が光り、それに呼応して暗い海面が青白く輝く。ほどなくして海面から銀色のゲートが現れ、さざ波を起こしながら高くそびえ立った。それはまるで、城の門をくり抜いたような立ち姿をしている。真ん中は空洞で扉がなく、そこから白い煙が出ていた。煙には邪気がなく、清らかである。三人が立っている地面からゲートまで、海の上に石畳の道のようなものができていた。    ——もう逃げないでね、この世界には戻れないんだから。    その瞬間、ルシルは突然声を耳にして、思わず両目を見開いた。その声は彼女だけに届いたらしく、後ろから聞こえてくる。背後の持橋町に顔を向けると、また声が聞こえた。    ——早く行って、立ち止まらずに、進み続けて。    そして声は聞こえてこなくなった。後ろから押し寄せてきたのは、ルシルにそっくりな声。まるで背中を押しているかのようで、別れを告げているかのようでもあった。 「……さよなら、ひかる」  異なる世界を隔てて結ぶゲートから、白金の光がルシルを照らす。唇を微かに動かし、言い残した最後の言葉が夜風に溶けていった。
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