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「本当に僕のことがわからないのですか?」
「わかりません。さっきの蛇みたいなのは何?」
「あなたを襲った魔獣はネブラと言います。魔獣を斬った剣士の名はディー。彼は今、ヘルブライトという刺客と戦っています。僕は魔術師ゼノ・シンクレア。ゼノとお呼びください、姫」
「……魔術師……姫ってわたしのこと?」
ゼノはしおらしく微笑む。ひかるは、とんと理解が追いつかない。
「そうです。あなたはアルナリエ王国の王女、ルシェール・エスティエリ・アルナリエ」
ひかるは眉根を寄せた。「そんな人知りません」と答える。
「いいえ。信じられないなら、ご自分の目で確かめてみるといい」
そう言ってゼノは右手を出した。指先からほのかに光が灯り、緑色のクリスタルが現れる。彼は聞いたことのない言語で呪文を唱えた。
すると辺りはエメラルドの光に包まれ、ひかるはまばゆさのあまり目をギュッとつむった。
再び目を開けると、そこには変わらず屋上の景色が広がっている。次にゼノは人差し指をくるりと回し、宙に丸を描いた。すぐに空中に円形の白い光が現れ、それは鏡へと変わる。
「これは、誰?」
ひかるは鏡に映る自分を見て卒倒しそうになった。黒のボブヘアは、ロングヘアに変わっている。その髪色が初めは白髪に見えたが、鏡に近寄ると金髪とも銀髪とも形容し難い。白い金色とでもいおうか、髪色に呼応して肌の色も白かった。極めつけは濃淡のある美しい紫の瞳だ。
「あなたの本当の姿です」
立ち尽くすひかるに、ゼノはそう言った。
「……違う、きっとこの変な鏡のせい」
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