3.わくわく体験入学、惑星カデム

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放課後。 惑星カデムの教師がそれぞれ持つ私室、その中でも高等部において宇宙化学を担当する一人の私室、私の担任の女教師の部屋。 私室とはいえ、ほぼ研究室であるそこは沢山の本が並んでおり、中には紙で出来た古い本も置いてある、女性らしさも感じない真面目な部屋。 そこでもスーツ姿で髪型を崩さない超真面目な担任教師は、わざとらしい「怒っています」という表情で私に大容量の量子シートを渡してきた。 「ではハルルカさんには宿題を課します」 「うへえ…」 「夏休みが終わる頃にオンラインで提出してください」 「チャラになるんじゃ…」 「なりません」 「そんなぁ…」 カデムの教師としては珍しい若さで、間違いなく優秀な研究者である彼女は宿題もきっちりしている、少し見るだけでもしんどい問題が立ち並ぶ。 「これ高等部の問題より難しくないですかぁ」 「二級宇宙船整備士の復習も兼ねています」 「問題作るの早すぎませんかぁ」 「私はそちらの資格問題も作問していますから」 「凄い人だったんですねぇ…」 どうやら過去にとんでもなく苦しめられた試験の作問者が彼女だったらしい、きっと最年少で合格した私のことを事前に知っていたのだろう。 「二級宇宙船整備士は責任者ですからちゃんと勉強すべきです」 「はぁーい…」 「そして安全に航行してこの学校に帰ってきてくださいね」 「はぁーい…」 「あ、そうだ、少々ここでお待ちください」 「はぁーい?」 本当は大して怒っていない彼女は、ニコニコと微笑みながら何処かへ行ってしまうと、私はお硬い部屋に一人ぼっちで残される。 「………」 「………」 「漁るか…」 こういう時は部屋を漁るのが定石だと認識している私は、実は漫画でも隠していないかなと本棚の奥を凝視した、その予想は当たっていたようだ。 「よっしゃ!奥に漫画発見!」 「先生こっちです」 「ちっ…早いな…」 とんでもない早さで帰ってきた担任教師は誰かを連れてきたようである、「先生」ということは他の科目の教師だろうか。 「おお、わざわざ悪いのうラテラちゃん」 「歴史教師のおじいちゃん…?」 「こちらアクトニア先生です。私の恩師でもあるんですよ」 「へえ…」 「私は外で待っていますね」 「えっ…ちょっと…」 ラテラちゃんと呼ばれた担任教師は、この部屋の主だというのに去っていく、それだけ秘密にすべき話をしたいということか。 「いやはや急にすまんのう」 「そういえばアジオスを知って…」 「そう!まさにその話がしたいのじゃよ!」 「…??」 しかしアジオスの話なら何もラテラちゃんを除け者にする必要はない、むしろ居てくれた方が盛り上がるのではないか、私はこの違和感に気が付けなかった。 「まさかこんなお嬢さんからその名前が出るとは思わなんだ」 「はい?」 「アジオス出身だそうじゃが今はおいくつなんじゃ?」 「えっと…今年で16…」 段々と嫌な予感が背中から腹に向かって回り込んでくる、それが胸元に込み上げてくる頃には察していた、彼が一体何を言いたいのかを。 「そんなわけがないじゃろう。157歳のわしには隠さんでいいぞ」 「そ、それはどういう意味で…」 「どういう意味も何もそのままじゃよ?」 直後に彼が口にする言葉を私は信じたくなかった、だってそんなことはあり得ないのだ、私はそれだけを信じてここまで来たのだ。 「アジオスは100年も前に滅んだ星じゃからな」 「………え?」 瞬間、私の視界は全ての光が消え失せて真っ暗になった。
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