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この惑星カデムに来てから数日。
持ち前のコミュニケーション能力ですっかりクラスに馴染んだ私は、来たるテストに向けて闘志を燃やしていた。
「やるぞやるぞやるぞやるぞやるぞ!」
「毎日言ってるべ」
「毎日元気だねー」
その熱に自然と人が集まり、今ではクラス総出でテスト対策をしてくれて勉強が捗っている、同級生としても興味深いイベントなのだろう。
「あ、あの!メリっぺちゃん…!」
「なんだべ?」
「ヤチムさん!ここ教えて貰えませんか!?」
「いいよー」
まあ彼や彼女らは私というよりも、ヤチムやメリルペンヌと交流する口実として丁度いいのかもしれない、ちなみにヤチムは優等生な男子に、メリルペンヌは今時の女子に人気である。
「ちょっと足吸ってほしいの!」
「な、なんでだべ!?」
「吸水でむくみが取れるし代謝が促進されてお肌にも良いんだって!最近ケプランの人達が始めたエステが流行ってるらしいの!」
「ほ、ほへぇ…」
「私はおまけかぁ…?」
「ヤチムさん!カラテに興味は…」
「うーん、ないかなー」
「ヤチムさん!この後オカ研メンバーとカフェでエクトプラズムの正体について論じませんか!」
「うーん?まあ暇そうだしいいよー」
「お前ら青春したいだけかぁ…?」
なお最近姿を見せないアイジスは、常に女子に囲まれていてどこにいるかも分からない、やっと掻き分けて顔を見せた彼女は、ふてくされた私にトドメとなる一言を告げたのだ。
「ハルルカ、私も彼女らと約束があるので頑張ってくださいね」
「ちっ…ここぞとばかりに遊びやがって…」
「では念のため整理券をご提示ください」
「きゃーきゃー」
「今に見てろよ…」
これだけ屈辱を受ければ反発して燃えるというもので、私の潜在意識に眠っていた反骨精神が開花を始める、私の中ではもうブリコになりたくないという気持ちより、周りを見返してやりたいという気持ちの方が強かった。
「てかブリコって何だよ」
「え?バカって意味だよ?」
「はあ?」
「え?どうしたのいきなり」
「ガリバコとバケノコは?」
「補習と夏休み返上だけど?」
「………」
「よくスラングなんて知ってたね!」
「…教えてくれてありがとう」
「どういたしまして!」
そして名前も知らない一般女子同級生から真実を教えてもらうと、私の中にくすぶる怒りの炎は油を注いだように激しく燃え上がる、平気な顔をして騙していたアイジスと、悪ノリでからかったヤチムとメリルペンヌへの復讐を誓ったのだ。
「やるぞやるぞやるぞやるぞー!」
「うわっ、いきなりスイッチ入った」
テストは明日、彼女たちとの別れも明日、勉強だけで過ごしてきた日々も明日で終わり、他人の青春をうらやむ日々も明日で終わりなのだから。
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