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おばあちゃんと子供達の前に広げる、お手製溢れる1枚のチラシ。
量子保存領域から取り出したその紙のような物体には、惑星アジオスという文字が浮かんでおり、その星の世界地図と思われるものに、ボタンが点々と表示されていた。
ボタンを押すと、写真と手書きの文字が宙に浮かび上がり、その場所を解説する観光ガイドとして私たちの目に映る、ここまで披露すればもう説明はいらないだろう。
そう、私ハルルカがこの星にやってきた理由とはつまり広報活動、惑星アジオスの観光大使としての使命、過疎化にあえぐ生まれ故郷を救うために、この広大な銀河へと飛び出したのである。
「ポ?ポ?」
「いやその…観光大使…」
「ポ?ポ?ポ?」
「宣伝のために来たのぉ…」
「ポ?ポ?ポ?ポ?」
「どうじでわがっでぐれないのよっ!」
しかし今回ばかりは相手が悪かったと言わざるを得ない、全ての星がこんな人達ばかりとは思いたくない、そもそもこの人達は別の惑星があることもあまり理解していないようだった。
「惑星アジオス!お隣さん!空を見上げれば!たまには見えるでしょ!」
「ポ?」
「ここは惑星ネーガ!一つ外側を回ってるのが私の故郷!青い星!見たことあるでしょ!?」
「ポポポ……」
恐らくはそこまで文明が発達していないのだろうか、とはいえ隣に進んだ文明があるのだから発展していないのもおかしな話である、ここだけ未開の部族だとしか思えない。
「ペシ、ポポ?」
「パポ……」
「ペパ!ペパ!」
「パパ……」
「え?本当に知らないの?マザリア系には人が住んでる星が二つしか無いのに…」
次第に子供達から問い詰められ、慰められるおばあちゃんが可哀想に思えてきた、別の惑星すらも知らない人達にこれ以上、私の常識を押し付けるのは良くないことだろう。
「ポポポ……」
「もう何だよー…そんなことあるのかよー…」
「ペポ?パポ……」
「何で私こんな星に来ちゃったんだろー…」
言葉が通じていないのを尻目に、失礼なことばかり言う私だが、失敗に慣れていない人生を送ってきた故に大目に見てほしい。
ハルルカはその優れた頭脳と容姿から、周囲の大人に甘やかされて育ってきた、大事に大事に成功ばかりを体験させられてきた。
いわゆる箱入り娘である少女にとって、何でもない失敗でも責任を感じてしまう、心に重くのしかかるそれの、降ろし方も知らないのだ。
「しゃーない、もうこうなったら…」
「ポ?」
「遊ぼー!」
「パー!」
しかし生来、鋼鉄のような硬いメンタルを持つ私は、さっさと切り替えて子供達との遊びに転じる、笑顔の中で育った私は笑顔しか知らないのだから。
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