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「だめだ…この星…おしまいだ…」
わざわざこの星を一周し、星単位で人間のギャグセンスが小学生並という事実を目の当たりにした私は、族長宅の前でベンチに座りながら絶望していた。
「もう滅ぼすしかない…浄化するには…」
あまりにも救えない現実に、観光大使を通り越して過激な思想が湧き上がってきた、そういうものとは無関係だった私は、この世界が酷く汚れて見えた。
「全て無かったことにして…文明を最初からやり直すしか…」
もちろんそれは冗談である、スペースジョークは破滅系の過激なネタが多い、面白くはないが星の破滅を頻繁に見ているのですっと頭に出てくるのだろう。
「はあ…母なる星…」
特にこの広大なアイワル銀河は全体的に明るいのもあり、死を迎える星を肉眼で見られることも多い、いつ我が星がという潜在的な恐怖が根底にあるのだ。
「ポ?」
「おばあちゃん…」
「ペポ、ペポ、ペパー」
「心配してくれてるの?ありがとう…」
私のことを心配してくれているおばあちゃんは、優しく声をかけてそっと隣に座ってくれる、私が一人でやってきた異星人だと理解しているのだろう。
「プシン、パンパン、ペココ」
「下ネタじゃないよね…?」
「ピボリ、ピボリ、バウム、ピボリ」
「バウム…?」
おばあちゃんはそう言うと、家の中から「バウム」という聞き覚えのあるお菓子を持ってきた、偶然にもそれは私の知っているバウムと同じものだった。
「わあ、バウムクーヘンだ」
「ポ?」
「これ私の星にもあるお菓子だよー!」
「パパー」
「やっぱり文化交流あったんだ」
どうやらおばあちゃんは私がアジオス星人だと気付いてくれたようだ、少なくともあの観光チラシは無駄ではなかった、言葉は通じなくとも伝わることはたくさんある。
「ちょっと味違う…」
「ポ?」
「でもおいしいよ、おいしい!」
「オイシイ?」
「うんうん、パパーっていうの?」
「パパー」
「あっ…でもこれだと嬉しい時もオイシイって…」
「オイシィー」
「ま、いっか」
例え正確に言葉が伝わっていなくとも、大切な部分だけは想いだけで伝わるものなのだ、人の温もりに触れた私は元気を取り戻した、初めての異星で焦っていたのかもしれない。
「まだまだ先は長いもんね」
「パー」
「下ネタだけは許さんけどなー」
「ポ?」
「おばあちゃんは言わないもんねー」
「パー」
最初から完璧な人間などいない、観光大使として少しずつレベルアップしていくのが肝要だ、慣れない文化も、来訪者である以上は最低限は許容しなければならないのだから。
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