暁の黒鳥ガール

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暁の黒鳥ガール

 夢の中で、わたしは黒鳥になる。  黒い翼を持つ天使のような存在。  暗黒や暗闇が友達で、魔王のしもべ。  ほのかな月のあかりに照らされた部屋の中で、わたしは目を覚ました。  机の上にある、書きかけの「黒鳥ガール」という漫画を恨めしげに眺める。  締め切り前の漫画家志望は孤独。わたしは二十代後半で、まだ夢を仕事にできていない。  昼間はしがない会社員をやって、休憩室でたったひとりでカップラーメンをすすっている。    脳裏に浮かぶ、あの暗闇を。  夜明けのこのひとときだけでいいから。  黒いGペンで再現できたら。  わたしは机に向かう。寝起きでも、この手は淀みなく動く。わたしとは似ても似つかぬ美しい十代の少女が産まれていく。  黒い翼を持つ少女の夢見る瞳を、慎重に描く。    夜が明けて、街が始まっていく。
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