代わってあげて欲しい

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代わってあげて欲しい

「helloーー。見えてる?」 いきなり現れたのは、金髪の女の人だ。 「うち、そこで魔導士やってたルビーってゆうんだけどーー。うち、この家族に助けられたんだよ。その人達が、めっちゃ困ってたから異世界に送ってあげたのーー。そこ使ってるって事は、もう勇者じゃないんだよね?嘘ついてもバレるから……。魔属の鏡には、今まで張ってきた結界の場所の状況見えてるから!残念ながら、今、その場所に居れるのは一家族(ひとかぞく)だけなんだよねーー。あんたらさ、作物も育てらんねーーわけじゃん。だったら、こっちに来なよ」 金髪の彼女が周囲をぐるりと見せる。 「何じゃ!そこに行くぞ。ユウシ」 「はぁーー。ふざけんなよ」 現れた祖父が、勝手に行く事を決めた。 「それじゃあ、これどうぞ」 メガネをかけた男に、何やら小さな石を渡されている祖父。 「どうやって使うんだ?」 「これをこうやって、こうやって」 「ほうほう。わかった、わかった」 「わかった、わかったじゃねーーんだよ!親父、いい加減にしろ!お前のせいでな。俺達は、ここに来てるんだよ!また、そんな適当な事するんじゃねーー」 「何を偉そうに、わしとマドカがいなかったら、お前なんぞ。魔王の餌になっておったんだぞ」 いつも通りの二人のやり取りが始まった瞬間だった。 【契約を完了しました】 ???!!! 何とも無機質な声がした。 何だろう。 例えるなら、王様が異世界人に貰った風呂沸かしの機械のような…………。 「契約って何だよ!契約って」 「お前と喋る前に教えてもらって打ってたんだ」 悪びれる様子もなく。 祖父は、口笛を吹いた。 「はあ?!今すぐ取り消せ。契約解除しろ」 親父は、祖父の手に握られている石のようなものを取り上げようとする。 「契約解除は、残念ながら出来ないんですよ」 「じゃあ、俺達はどうなる?」 「一時間以内にあの穴に入って貰わなきゃ駄目なんです」 「い、一時間!!!」 「荷物なんか少ないし、いいじゃないか。ほら、ユカさんとマドカを迎えに行こう」 「はあ?嫌に決まってんだろうが……」 「あのーー。断ればここから追い出されます。あっ、作物がなったんで。あんな感じで……」 申し訳なさそうにメガネの男が笑って空の方を指差すと結界の上に魔怪獣達がいた。 魔怪獣達は、飼い主の為の食料を集める。 その為の嗅覚が凄まじいのだ。 「どうされますか?」 親父の顔がピクピクと震え出している。 「どうもこうも。勇者じゃないわしらは何も出来ん。それとも、あいつ等と戦うのか?」 「わかったよ!迎えに行くよ。王子は、何かいるか?」 「いらないよ」 「じゃあ、その辺の荷物纏めてきてやるからな。行くぞ、親父」 「わかった、わかった。待て待て、早いぞ」 親父と祖父は、急いで荷物を纏めに行ってしまう。 俺は、一人取り残されて畑に出来た光る穴を見つめていた。 「新しい世界(ばしょ)は怖いか?」 早苗さんが、俺に話しかけてくる。 「そうだね。俺は、ずっと勇者になりたかったから……。ここを離れるともうチャンスはないって事だからね」 「正義感強いんだな」 「そりゃあ、勇者になりたいからね」 「現実世界(あっち)に行けば、君の正義感が役に立つはずだよ」 「えっ?」 「その短剣貸して」 「あっ、うん」 早苗さんは、短剣に向かって何かを押した。 すると、短剣は細長い形に変わる。 「何、これ?」 「電源ってボタン押して、この数字を押して決定を押す。そしたら、君の正義は貫ける」 「どういう意味?」 「向こうに行けばわかる」 早苗さんは立ち上がる。 「怖いの何て一瞬だから……。向こうに行けばきっと楽しいよ」 「本当にそうかな?」 「そうだよ!大丈夫。それに、君の正義感が役に立つから」 早苗さんの笑顔を見ながら、俺は決心していた。 この世界で勇者になれないなら……。 現実世界(むこう)で勇者になればいいんだ! 「さあ、そろそろ行くか!」 荷物を纏め終わった家族がやってきた。 「向こうにいけばわかるらしい。だから、迷わず飛び込むだけだ」 「新しい生活を楽しんで下さいね」 「そちらも楽しんで下され……。ほれ、行くぞ」 「う、うん」 祖父に腕を引かれて光る穴に入る。 次に行くのは、どんな場所なのだろうか? 今よりも、マシなのだろうか? ビカッと光ったと思った次の瞬間。 「わぁーー。なんじゃ、この建物は」 祖父の声が聞こえて目を凝らす。 「あーー。来たじゃん!」 そこにいたのは、金髪の女の人だった。 「来たぞ!」 「よかったーー。じゃあ、こっち案内するからついてきて」 言われるままについて行くと緑の屋根の家にやってきた。 「ここが、今日から住む家だから!入って」 彼女の言葉に家の中に入る。 「何とこれはどういうものだ?小さなお城みたいだな」 「だから言ったじゃろ。わしを信じればいいって」 親父と祖父は、家を見て驚いている。 俺は、早苗さんが変えてくれた短剣を握りしめた。 「あんたさ!それ、使う時は注意しなよ」 彼女が俺の短剣に気づいて近づいてきた。
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