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そんな兄であったがとうとう精神的に追い詰められ、ある日何の前触れも無く僕の前から消えてしまった。
だが、僕は唯一見つけた、最後に残った悦びである生き物の殺戮を止めることはできず、寧ろその手法はより日に日に残虐性を増していった。
その頃から僕は生き物を殺すことにある種の美意識を持つようになっていた。
殺した動物には作品名を付け、写真や動画といった電子媒体に残し、作品が生き続ける様に尽力するよう努めた。
やがて僕は作り上げた物ものの素晴らしさを他の人間と共有したいという考えを持つようになっていた。
貯め込んでいた作品の動画像を公開する為、ダークウェブ上に僕の工房を開設した。
案の定、僕の美の価値観に共感してくれる人々は一定数現れた。
そしてその中に僕の世間的には到底理解し難い、酷く不道徳な芸術性に目をつけた団体がいた。
彼等は黒日荘という名の公開処刑サイトをダークWeb上で運営しており、僕を処刑人の一人として雇用したいと名乗り出たのだ。
黒日荘の配信動画はどれもその悍ましいまでの残虐性を誇り、数多の同類のサイトの中では群を抜いていた。
何より、無料公開枠のみであったが僕自身もその視聴者の一人であった。
そして、それは人間を土台として作品を作るという、ある種の超えてはいけない最後の一線を越えることを意味していた。
だが、それを心の底から望んでいた僕は考える間もなく二つ返事でその誘いを了承した。
やがて数日も経たぬうちに、黒日荘の遣いが場所を教えても居ない僕の元へ訪れ、黒い工房へと招待された。
僕は初めての人間を土台とした初仕事を何の躊躇もなく全力でやり遂げて魅せた。
決してその作品の出来は、今思うと細部に渡り荒い部分があったことは否めなかったのだが、オーナーはその仕事ぶりに大いに喜び、僕を一人の人間として丁重に扱ってくれた。
そしてその日から、激しい嗜虐壁のある歪で反社会的な孤独な青年から、一芸術家として闇の世界で生きることを許されるようになった。
それからというもの不定期に開催される興行を今日に至るまで、それら全てを着実にこなして来た。
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