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「木南も、俺と離れるのは寂しい?」
「そ、それは……もちろん寂しい」
「ふぅ~ん」
必死な私とは反対に、水上くんはふわりと余裕の笑みを浮かべた。なにもおかしなことは言っていないと思うけれど。
「私ね、水上くんが好きなの。中学のときからずっと好きだった」
意を決して自分の気持ちを言葉にしたら、一気に顔に熱が集まってきた。おそらく今、驚くくらい赤いだろう。
緊張で声は震えていたけれど、勇気を振り絞った自分を素直に褒めたい。
「今の、マジ?」
「最後に自分の気持ちを伝えたかったの。でも、水上くんは日鞠が好きなんだから告白されても迷惑なだけだよね」
相当困らせてしまったのか、彼は右手で口元を覆ってフイッと私から視線を逸らせた。
「あの、本当に自分勝手でごめんなさい!」
「いや、違うんだ。木南はふたつ勘違いをしてる」
言われた意味がわからないままうつむいていた顔をあげると、水上くんの透き通った瞳と視線が交錯した。
真っ直ぐに射貫かれた私は、それだけで身動きが取れなくなる。
「まず、ひとつ目。俺が引っ越すのは事実だけど、転校まではしない」
「え?!」
そんなバカな。途端に頭が混乱してくる。
文化祭が終わったら会えなくなるかもしれない、今日が最後のチャンスだと考えたから一大決心をしたのに。
「春には卒業だし、遠くなるけど新しい家から通えない距離じゃないから」
「でも日鞠が転校しちゃうって言ってて……」
「たぶん門脇が話を盛ったな」
思わず小首をかしげた。たしかにこの時期に転校なんておかしいと最初に思ったけれど。
でも、どういう意図があって日鞠が私に偽情報を伝えたのか、それがわからない。
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