57人が本棚に入れています
本棚に追加
「木南、好きだよ」
頭はクラクラとしてめまいを起こしそうなのに、気持ちはフワフワとしたまま胸が高鳴って仕方ない。
「なんで泣くの」
「ごめん。なんか、信じられなくて。私は地味だし……日鞠のほうが明るくてかわいいのに……」
感動して両目からポロリと涙がこぼれる。
彼があわてて手を伸ばし、親指でそれを拭ってくれた。
「中学のとき、書いてるノートの字を見てすごく綺麗だと思った。昔から木南は勉強もできるし真面目だったよな。でも極めつけは絵だった」
ずっと前から私のことを見ていてくれたのだと実感したら、また涙があふれそうになる。
たしかにマスキングテープで描いたガネーシャの看板を、水上くんはすごく褒めてくれていた。
「木南が描く絵は繊細で、めちゃくちゃうまかったから。心が澄んでて綺麗なんだろうな、って惹かれたんだ」
「わ、私のほうこそ、文武両道でカッコいい水上くんが好きだったけど、ずっと片思いだと思ってた」
「それは俺も。木南は恋愛に興味なさそうだったし」
彼がやわらかな笑みを浮かべたのを見て、私も苦笑いを返した。
どうやら私たちは最初から互いに片思いをしていたらしい。
「日鞠は気づいてたのかな?」
「たぶんな」
私の片思いを最初から知っていた日鞠が、途中で水上くんの気持ちに気がついたときには、相当ヤキモキしただろうと思う。
日鞠には申し訳ない気持ちを抱くと共に、ずっと見守ってくれていた彼女のやさしさに感謝したい。
「お互いに片思いは今日で卒業だ。俺と付き合ってほしい」
彼の言葉にコクリとうなずいた。
照れくさそうに微笑む水上くんを間近で見ているだけで、胸がキュンとして仕方がない。
最初のコメントを投稿しよう!