ずっと好きでした~そばにいてもいいですか?~

6/17
前へ
/17ページ
次へ
「手伝えなくて悪いな」 「ううん。しょうがないよ。気にしないで」  詳細な内容まではわからないが、ふたりは最後にそんな言葉を交わしていた。  軽く右手を上げて立ち去る水上くんに対し、日鞠が明るい口調で「お疲れ~」と声をかける。 「ちょっと透桜子! なんかいい感じだったんじゃない?」  日鞠がニヤニヤしながら近寄ってきて、人差し指で私の腕をちょんちょんと突っつく。  彼女には中学のころから私の片思いのことは伝えてある。  おこがましくてほかの誰にも言えないこの気持ちも、親友の日鞠にだけは言えた。 「私、普通に話せてたよね? 変じゃなかった?」  真面目な顔をして確認をすると、彼女は半分あきれたように笑ってうなずいた。 「まだ緊張するの?」 「するよ。水上くんは特別。ところで、なにか日鞠に謝ってたみたいだけどどうしたの?」  再びマスキングテープを手に取りながら、なにげなく尋ねたのだけれど。  日鞠は私から視線を外し、右手をこめかみに当てながらしばし考え込んだ。 「実は……これを聞いたら透桜子はショックを受けると思うんだよね」 「なに?」 「実行委員の私には先に話してくれただけだから、みんなにはまだ内緒なんだけどさ……」  周りには誰もいなくて私たちふたりきりなのに、日鞠は注意深くキョロキョロと辺りを見回したあと、声のトーンを最小限に落とした。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

56人が本棚に入れています
本棚に追加