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「文化祭当日までは来るらしいよ。転校はそのあとかな」
「そうなんだ……」
日鞠が懸命に私の表情をうかがって気を使っているのはわかっているけれど、今の私は愛想笑いすら上手にできない。
「透桜子、こうなったら選択肢はひとつしかないでしょ!」
「……なに?」
「いなくなる前に気持ちを伝えるの!」
なんでもないことのように言う日鞠に対し、私は顔の前で右手をブンブンと大げさに横に振った。
「それは無理!」
「中学から好きだったんだから、このままだと絶対後悔する。あとになって、やっぱり伝えておけばよかったって思っても遅いんだよ?」
「でも、水上くんは日鞠のこと……」
そこまで言ったところでハッとして言い淀んだ。だが時すでに遅しで、日鞠は途端にあきれ顔になる。
「まだそんな誤解をしてるの?」
水上くんは日鞠を好きなのだと思う。
日鞠は根も葉もない憶測だと言うけれど、中学のころからふたりを見てきている私がそう感じるのだ。
「日鞠はいつも真っ直ぐで眩しいくらい輝いてるから。根暗な私とは大違いだもん」
太陽みたいに明るい日鞠は、水上くんの隣にいるのがよく似合う。
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