ブラックアウト

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 目覚めると、病院のベッドでした。  看護師さんが目覚めた私を見て、心配そうに言いました。  「気分はどうですか? 外傷はほぼなかったんですけど。気を失ってしまったんですよ」  「そうですか。ご迷惑をかけました。停電は、終わったんですか?」  「ええ。停電はだいぶ前に終わったんです。ところで、警察の方が、聞きたいことがあるそうですよ」  「聞きたいことですか?」  「ええ。あなたが車にぶつかる寸前で、あなたを弾き飛ばした男性がいたことを、複数の方に目撃されていたんです。でもその男性が、現場に見あたらないそうなんです。貴方の知り合いではないかと警察の方が思われているらしく。車の運転手は、絶対に男性がいたと言っているんです」  私の心臓が一気に脈打ち、鼓動の音が高まりました。  「地震と停電が作り出した、幻じゃなかったんだ」と叫びました。    看護師が目を見開きました。  「幻って。どう言う事です?」  私は看護師の問いに答えること無く「幻じゃない! 幻なんかじゃない! いたんだ。いたんだ」と叫びました。  そして枕元にあった、私の携帯を開きました。    ――でもやはり既読はついていませんでした。    携帯を呆然と眺める私に、私から答えを聞くことを諦めたのか、看護師さんが言いました。  「先生を呼んできます」  トォ、トォ、トォ、トォ――。  と看護師の足音が耳に入って来ましたが、私を看護師を見ることもしませんでした。    私は携帯に向かって指を走らせました。  ”戸部くんは、本当にいたんだね”  ”今までありがとう”  送信。  それから私は少し考えて、また書き込みました。  ”私は戸部くんに、おとぎの世界から弾き飛ばされたみたい”  送信。  そして私は携帯電話を抱きしめました。  ――私の時間は、流れ出したようです。   --fin--
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