死に戻った悪女

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 罪状はヨハニスの新たな婚約者となった、ヘレン子爵令嬢の暗殺未遂。だがこれは完全なる冤罪だ。蝶よ花よと大事に育てられたルーリエは、ごく普通の非力なお嬢様だ。いくら恋敵だからといって、ぶ厚い縄で絞殺するのは無理な話である。  そもそも自分の手を汚してまで殺害する動機もない。婚約だってルーリエに一目惚れしたヨハニスから申し込まれたものだった。  出会いは一年前のデビュタントで、王族からの求婚を伯爵令嬢が断る選択肢はなかった。それでも婚約者として好きになる努力はした。向けられる好意と同じくらいの気持ちを返せるよう、歩み寄ってきたつもりだ。厳しい妃教育にも耐えた。  狂おしいほどの愛情はなくとも、ゆっくりと育んでいけばいいと思っていた。しかしながら、描いていた幸せな未来はいとも簡単に崩れ去った。 (わたくしが稀代の悪女? ばかを言わないで。悪女というならヘレンのほうじゃない)  ルーリエは悪女だ、と吹聴していたのはヘレンだ。  最初は、男好きで有名な彼女の話を誰もまともに取り合わなかった。
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