gradation

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 僕たちは駅にいる。一番線に着いた電車からまっすぐ改札へ向かい、人の流れに乗って駅を出た。北口の壁に寄りかかった僕の隣に、柿本も背中をあずけた。 「富樫(とがし)って、いっつも真っ黒だよね」  肩につかない柿本の髪が揺れ、僕をとらえた視線が上から下まで一往復した。黒い髪、黒いマスク、黒いロンT、黒いチノパン、黒いリュック、そして黒いスニーカー、これが僕だ。  ゆっくりと動きはじめた電車の音が、コンコースを抜けて耳に届く。 「黒、好きなんで」  緩やかに駅を吹き抜ける風は、ふわりと僕の鼻先をくすぐった。彼女がまとう人工的な香りは少し苦手だ。スニーカーの先にある土汚れを気にしているフリをして、この気まずい空気を紛らわそうとした。  「なんで? 他の色も着ればいいのに。緑とか似合いそう」  そんなことを緑のカーディガン着ている人に言われても……。 「柿本が緑好きなだけでしょ」 「あ、まぁ、そうだね。私、緑率高いかも」  自分のカーディガンの色を見て、自分で言って一人でウケていた。  落ち着かない僕は、スマホで時間を見た。思っていたよりも時間は経っていない。 「でもね、緑は好きだけど、緑ならどれでもいいってわけじゃないの」
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