gradation

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 緑について熱く語る柿本の話が、全く頭に入ってこなかった。お構いなしに話してくるはつらつとした声が、どうも落ち着かない。少し早口で脳が追いつかない。 「聞いてる? あんまり興味ないかな」  愛想笑いをするしかなかった。カラフルな服を着る柿本と、全身黒づくめの僕では、住む世界が違いすぎて何を話していいのか分からない。  柿本の言っている緑の違いは、僕にとって全部緑だ。 「え、黄緑も、真緑も、深緑も?」 「うん」 「エメラルドグリーンも、モスグリーンも、ミントグリーンも?」 「うん?」  英語で言っても変わらないだろ。緑は緑だ。 「富樫は、深緑とか似合いそう」 「えぇ……いやぁ……」   自分が黒以外の服を着ている姿を想像できない。首をかしげて顔がひきつった。 「黒しか似合わないし、そういうのを着て目立ちたくない」 「え!? 逆に全身真っ黒の方が目立ってるよ?」 「……え?」  目を丸くした柿本は、すぐに吹きだしてそのままケラケラと笑った。 「そんなに真っ黒な人いないでしょ。見てごらんよ、周り」  駅に向かう人たちを見回した。いろんな色も、さまざまな柄も、世の中には溢れている。だけど、似たような服を着て楽しそうに話している女の子たちを見て、僕は鼻で笑った。
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