gradation

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「おー、富樫。付き合わせてごめんな」 「いや、全然」  数少ない友人の一人、大島が小走りでやってきた。ロゴがプリントされた紫のパーカーにブルージーンズで登場だ。 「大島遅いよ。富樫とバッタリ会ったから良かったけど」 「ごめんって。急いで階段降りてたんだけど、プシューってドア閉まっちゃって」 「富樫、一緒に待ってくれてありがとうね」  目を逸らして首を振る。似ている二人はカラフルだ。真っ黒な僕は溶け込む隙がない。 「え、ていうか、靴下は青いじゃん」 「靴下は別に見えないからいいんだよ」  あんなに黒を主張していたのに、迂闊にも青い靴下を見られてしまった。 「なんだかんだ言って、中身はカラフル!」 「別にいいだろ」  何を思っているのか、柿本は僕を見ながらニヤニヤしている。   「え、なんの話?」 「富樫がいつも真っ黒いからさ」 「いや、その話はいいから」 「え、なんの話だよ」 「富樫が言いたくないことは、大島にも言えなーい」 「えー! めっちゃ気になるじゃん」
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