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騒ぐ大島にケラケラと笑う柿本。この二人、本当にお似合いなんだ。
「これからカラオケなんだけど富樫も行く?」
「ばっか。行くわけないだろ」
気を遣って誘ってくれたのかなんなのか、二人の邪魔をする気はさらさらないよ。
「私は全然気にしないよ。富樫もカラオケ行こうよ」
「遠慮します」
「えー、行こうよ」
「結構です」
大島に軽く手をあげて「じゃあまたな」「おぅ! またな」と、別れ際のいつもの挨拶をして背を向けた。
弾む二人の声が耳をかすめる。二人の前で僕はどう接していいのか分からないし、デートなんだからおじゃま虫は遠慮するよ。
街路樹の青々とした大きな葉が、太陽の光をうけてときおり輝く。陽にあたった明るい緑も、影になった深い緑も、カサカサとおしゃべりをするように揺れている。
清々しい風が吹き抜けた。規則正しく並べられたブロックの歩道を、僕は僕のペースで歩いた。歩を進めるたびに、黒いスニーカーから鮮やかな青が、チラリと顔をのぞかせながら。
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