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 それから、北大のポプラ並木に足を延ばした。  途中で買ったソフトクリームを食べながら、長い並木道を並んで歩く。 「大学時代に戻ったみたい!」  ふたたび、陽子のテンションが上がる。 「ホントだね。もう一度、二人で大学生やりたいな」 「じゃあ、来年北大受けない?」  康司を見上げるように言う。  彼女は時々、すっ飛んだことを言い出す。  それが、冗談なのか本気なのか、表情からは分からない時がある。 「えっ……?」 「ウソだよ」  一瞬固まる康司を見て、ニッと笑ってから、 「でも、ちょっと憧れるなぁ……」  両手を広げ、気持ちよさそうに深呼吸をして見せた。 「うん。わかる」  康司も一緒に深呼吸する。  東京育ちの二人は、北国への漠然とした憧れを抱いていた。 「お腹すいたね」  ソフトクリームを食べ終えたばかりの陽子が言った。  康司は笑って、 「どんだけ食うんだよ」 「ははは。でも康司、旅行に出ると、いくらでも食べられちゃう気がしない?」 「確かに。朝なんかいつも食べないのに、ホテルの朝食はすごい食べれるもんな」 「でしょ?」  その名の通り、陽子は明るい。  康司にとって、太陽のような存在だった。
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