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梟はその翼を広げる(6)
夜、家から出て行った郁恵だが、彼女は無計画だったのではなく、羽振りがよい男に頼ろうとしていたのでもなかった。
写真館の近くにある古いボロボロの借家……これへ目星を付けていたのだった。
その建物を新たな住処と定めた郁恵は、写真館との間を往復する生活になっていった。
勤務を終えたら道を歩いて帰ってきて、借家では眠るだけの郁恵である。
家族の心配をよそに彼女はスッキリとしていた。
通勤するための費用もかからなくなった上、傲慢な父の顔を見なくても良くなり、耳障りな母の声を聞かなくても良くなったのだから。
彼女はおごり高ぶる父が目障りだったし、ひたすらに従うばかりの母にも不快感を抱いていた。
ただ……郁恵は妹・文恵が気になった。
父さんと母さんは勝手にやらせておけばいい、けれども……ふみちゃんはかわいそうだよなぁ……と、郁恵は思っては布団をかぶって寝ていた。
そして、郁恵はある真実をみつける。
それは厄介な問題が消えてスッキリしたから、自分を束縛する者が目の前にいなくなったからといって、それだけで幸せにはなれないのだ、ということであった。
このとき、郁恵には新しい恋人がいなかった。
休みの日に街をぶらぶらして、気持ちを変えようとしていた彼女は中学生の頃のクラスメートとばったり顔を合わせた。
「……!! い、いくちゃん……ひ、久しぶりだねぇ〜!!」
「……あ、あれれ? ……えみちゃんじゃない? ……あんた、今なにしてるの〜?」
クラスメートだった絵美子と喫茶店で話した郁恵は、ある情報を教えられる。
「……来月さ、同窓会やろ〜ってことになってるんだ。正広君が言い出してさ……でね、いくちゃん、来れたら来てよ〜〜」
「……ふーーん……同窓会……か……」
詳しいことを相手から聞きながら、「どうせ暇だし……彼氏もいないし……気晴らしに行ってみようかなぁ〜」と、郁恵は考えた。
これが想像を絶する、大変な結果をもたらす出会いを生じさせたのである。
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