14

1/2
前へ
/70ページ
次へ

14

光広は、当面必要な荷物だけ持ち、とりあえずウイークリーマンションを借りた。 沙希からは、住む場所が決まったら荷物を送るから住所を知らせて、と、メールがきていたが、光広は住所を知らせる事を渋っていた。 できるならば沙希と娘達のいる家に戻りたい。別居も離婚もしたくないのだ。 礼子からは『離婚届は出したのか』と会うたびに催促されていた。 「あなたが離婚したくない、っていっても、もう、ダメなのよ。あちらはあなたを許してくれないの。あなたは私と一緒になった方が幸せでしょ」 「あなたがお嬢さん達に対して責任を果たせなかった、って後悔があるなら、しっかりお金を渡してあげたらいいのよ」 「まぁ、沙希さんに対しては、もう責任とか感じなくてもいいんじゃない。あなたの妻としての魅力が無くなってたんだから。あなたに愛される努力をしてなかった彼女にも、こうなった責任あるでしょ」 「沙希は妻としてちゃんと家庭を守ってくれてたよ。光希と沙恵を立派に育ててくれたんだ。俺は彼女に感謝してるよ。ただ… もう、女として見られなかった…だけだよ」 「そうね、あなたは私に出会っちゃったんだもんね。これも運命なのよ」 「沙希さんと別れてあげた方が良いのよ。あなたは彼女を女として見られないし、幸せにはしてあげられない。彼女も別の誰かと一緒になった方が良いのよ。あなたと籍が入ったままだったら良いお相手もできないでしょ。解放してあげなきゃ」 光広は離婚を承諾した。
/70ページ

最初のコメントを投稿しよう!

817人が本棚に入れています
本棚に追加