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離婚した事を光広が実家の両親に連絡した時、『オマエがだらしないからだ、沙希さんに申し訳ない。孫達にも、もう会えない』と、散々責められた。そしてそのショックもあったのか、立て続けに両親が亡くなった。 もう、自分を思ってくれるのは礼子だけなんだと、礼子のマンションで一緒に暮らすようになった。 毎日、礼子と一緒に暮らすようになると今まで気にしなかった問題が見えてきた。 礼子は本当に殆んど家事をしなかった。もちろん料理もしない。外食かデリバリーが殆んどだ。どうしても味の濃い物が多くなり、もう若くはない光広には合わなくなった。 ずっとこんな食生活では、身体にも良くないと、光広がなんとか料理をしてみたものの、レシピ通りに作るので味はなんとか…。見た目はイマイチ…。 沙希は結婚して、毎日の食事を作り始めた頃、お世辞にも料理が上手とはいえなかった。一週間のうち、何度も『豆腐を加えたらすぐにできる麻婆豆腐』が食卓に並んだ事もあるし、揚げ物もこわがってできなかった。 しかし、いつの間にか『料理上手なママ』と、言われるようになっていた。家族の為に沙希なりの努力があったのだろう。 光広は沙希の何を見ていたのか。家の事は全て彼女に任せてきた。信頼していた。 長い間、一緒に暮らしていながら彼女の努力に気が付いていなかった。
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