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光広は会社近くの行きつけの小料理屋で食事をする事が多くなった。 夜だけだったこの店が、朝活ブームにのって 朝から開店しはじめた。店の大将は長く通っている光広の好みをわかってくれている。出汁をきかせた家庭料理、おばんざいをテイクアクトをする事もできた。 「私は母親が作るような普通の家庭料理が嫌いなの」 礼子は食べようとはしなかった。また、一緒にその店に行くこともなかった。 この店のカウンターに光広のお決まりの席ができた。食事をしながら大将と話したり、隣に座った他の客と世間話をしたり。会社からも近いので、同僚と食事する事もある。 ここが彼のダイニングになったようだった。 礼子と同じ家で暮らしても、一緒に過ごす時間が増えたようには思わなかった。
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