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礼子は光広が離婚してから、パートナーとしての彼の存在を公にしていた。 一時期は『略奪愛』と噂されたが、『人の噂も七十五日』と、礼子は全く気にしなかった。 もう、お互いにシングル。人目を気にする事はないのだ。 同じ部屋に帰り、行きたい場所に一緒に出掛ける事ができる。 がむしゃらに仕事をしていた若い頃には持てなかった 穏やかな日常を、パートナーである光広と過ごしている。 光広は十分、魅力的だ。 昔の言い方をすると『3K』 高学歴、高身長、高収入。 礼子が二十代や三十代の頃には、当時の同世代だった光広には惹かれなかっただろう。 その頃は自分の方が高収入、高学歴だったし、それに対してこだわりもあった。 しかし、50を過ぎて、成長した今の彼は、十分、自分に釣り合っている。 礼子は満足していた。 仕事と、パートナー。 こんなに安心して、満たされた気持ちを持ったのは初めてだった。
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