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沙希の母校の大学生達がゼミ研修で、博物館の特別展示に参加する事になった。 ゼミ担当の水谷教授はひょろりとした長身で色白。銀縁メガネの『いかにも学者さん』という年齢不詳の風貌だった。 「今回の特別展示を担当する学芸員の梅崎沙希です。よろしくお願いいたします」 「梅崎さん…って」「もしかして、お兄さん、聖明学院だったんじゃない…? 生徒会していた梅崎くん…?」 「兄、聖明学院で生徒会してました。梅崎明です」 「やっぱり! 僕、同級生なんですよ。梅崎さん、なんとなく見覚えあるな、って思って。高校生の頃、梅崎くんが可愛い妹と一緒に登校してる、って有名だったから。何度かみたことあったんですよ。フルート持って登校してたでしょ。僕もオケ部でオーボエしてたから。楽器持ってるコって目に留まるからよく覚えてる」 「うわぁ、お恥ずかしいです。そんな昔の事。それにその頃、私、太ってたし…」 沙希は中学高校生時代、少しぽっちゃりとして垢抜けていなかった頃の自分を見られていた事が恥ずかしかった。 「梅崎くんの妹、可愛い、って評判でしたよ。ホント、懐かしいな。お兄さんはお元気ですか?」 「はい、元気です。今、ブラジルで仕事してるんです」 「こりゃまた、遠い! 地球の裏側だ! なかなか会えないからさみしいですね」 「でも、今はネットで繋がってますから。たまにメールしてますよ」「水谷先生は兄と仲が良かったんですか?」 「いゃ、僕はお兄さんと違って目立つタイプじゃなかったから。同級生っていうだけで…。接点があったのは学園祭の時くらいかなぁ。オーケストラ部の演奏会の会場設営で学祭実行委員長だった梅崎くんと打ち合わせしたくらいで…」 「私、学園祭のオケの演奏、聴きに行ってました! 私も吹奏楽部だったから」 「だからフルート持って登校してたんだね!」 ゼミの研修が終わってからも、水谷が沙希をたずねて博物館に来るようになった。沙希は久しぶりに音楽の話ができて嬉しかった。
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