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「今日、すごかった! 石田さんが俺達のいるスポーツバーに来たんだよ」 光広は深夜にタクシーで帰宅、手を洗う事も忘れて、そう報告してきた。興奮醒めやらず…… 「六本木のテレビ局で収録があったんだって! それでその後、スポーツバーにラグビー観に来たらしいんだよ!」 「いやぁ!ホント、びっくりしたよ!まさか、本物の石田さんと会えるなんて!」 少し酔いが入っているせいもあるのか光広の興奮はすごかった。 「実物の石田さん、結構、背も高いんだよね。テレビだと椅子に座ってることが多いから、あんまりわからないでしょ。ヒール履いてたら一緒に歩いてても俺と目線が変わらないんだよ」 「お店でて、一緒に歩いたの?」 「いゃ、タクシー乗るトコまで一緒にに歩いただけで…」 とたんにモジモジし始めた。 なんとなく、一緒に帰って来たのかな、と、沙希は感じた。 「お、お風呂入るわ」 光広はソクソクと立ち去った。 ピコン♪ テーブルに置かれた光広のスマートフォンにメッセージの通知。一瞬だったが、沙希は確かに見えた。 石田礼子 「今日は有難うございました。とても楽しかっ…」 メッセージ受信の通知ライトが点滅している。 沙希は手にとって確認したい気持ちをぐっと堪えた。 これまでだって仕事とは関係のない女性からの連絡は数えきれない程あったのだ。その度に見て見ぬふりをしてきた。ただの「付き合い」だ。 沙希は波立つ心に蓋をした。
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