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「奥さんの事、何て呼んでるの」 珍しく礼子が妻の事を聞いてきた。 「沙希とか…かな…?」 最近、名前で呼んでいただろうか…? 光広は気にした事が無かったかもしれない。 「奥さんって、動物に例えると何系?」 「猫に似てるって昔は言われてたかな」 「へぇ、猫系ね、可愛いのね。私は何系?」 「うぅ…ん…」 「この間、収録前の準備中、メイクさんに、『石田さんはゴリラ系ですね!』って言われたわぁ」 「あ、ゴリラ系美女か、流行ってるね、広川アリスとか、中田ミキとかでしょ」 「でも、ゴリラ系って何だか酷くない?恐そうなの?」 「いゃ、恐そうなんじゃないよ。賢くて強い美女って事でしょ」 確かに礼子は『ゴリラ系美女』だど思う。心身共に強く逞しい。知的で美しい。広い視野をもち、同じ目線で話ができる。 最初は、憧れの才色兼備、有名人と会える嬉しさ。共通の趣味。彼女からの好意を感じ、気付かない振りはできなかった。すぐに男女の仲になった。 礼子は自立しているし、俺に家庭がある事は気にしていないようだったから、まさか沙希の事を聞かれるとは思ってもいなかった。 平日は仕事後に、週末の土曜日には朝から一緒に過ごす。 お互い、連絡したい時に連絡し、会いたい時、会える時に会う事になっていたが、気がつけば一緒にいる時間が増えていた。 そんな生活が半年以上続いている。 礼子が沙希の事を話題にするのは意外だった。
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