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痕
夏が来て、凄まじい酷暑。
エアコンの冷気を嫌がる母は、扇風機で十分に涼しいと言う。
私は暑さに耐えきれず、母に布団をかぶせて、微々たる冷房を入れる日々。
この頃には母の体は黒くなりすぎて、化け物と暮しているようだった。
暑さにやられ、私もまいっていた。
だから母を逃げられないようにした上で、気晴らしに外出した。
携帯電話に連絡がきたのは、4時間ほど過ぎてから。
母が熱中症になっているのを、自治会長さんが見つけたのだと言う。
どうやって家に入ったのか知らないが、自治会長さんは遠慮なしに救急車を呼んだ。
2時間後、母の死亡が確認され、私は監禁と虐待の容疑で取り調べを受けることになった。
母は昔から底意地が悪く、どこまでも自分本位で私に迷惑をかける人だった。
担当刑事は母の全身についた指紋の痣を口実に私を送検すると言った。
無実を訴えても、写真を突きつけられた。
首、腕、胸、足、至る箇所に、私が強く圧迫しただろう指の痕がついている。
日常的に虐待していたと迫る刑事に、私は一部を認めたが、それが間違いだった。
私は裁判で有罪となり、情状酌量されずに実刑となった。
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