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「じつはね、救急車に同乗していたクラスメートの話によると、昨日の放課後、三人は夜まで学校に残って、霊を呼び寄せる儀式をやっていたんだって」
「霊を呼び寄せる儀式、ですか……?」
まさか霊に体を乗っ取られたのではと一瞬、非科学的な憶測がよぎる。
「精神科の畠山先生は、集団ヒステリーじゃないかって。それにしても今の若い子ってなに考えているかわからないわぁ」
どうやら被害者は朝一番で専門医の診療を受けていたようだ。佐分利は困惑気味に肩をすくめる。
「ところで、あとのふたりはどうなったんでしょうか」
「厄介な状況だからほかの病院じゃ門前払いだったらしいわ。それでね、結局は三人ともこの病院に運ばれたわけよ」
救急隊は別々の病院に連絡を取ったが断られたらしい。当直医はてんてこまいだったろうが、患者を監視できるシステムがあり、心身の面でサポートできる病院といえば限られているからやむを得ない。
「でも、お互いを接触させるわけにはいかないから、別の病棟の個室に隔離して監視下に置いているの。変な気を起こさないか心配で、スタッフは神経をとがらせているわ」
なるほど、それが朝から物々しい雰囲気の理由なのだと前田は理解した。
モニターの画面を確認すると、三田村薫は鉄格子のベッド上で布団に隠れて丸くなっている。まるでなにかに怯えているようにも見えた。
「佐分利さん、ありがとうございます」
前田は佐分利に礼を言い、ほかの病棟に入院しているふたりを見に行くことにした。
もうひとりは内科の病棟に入院していた。ナースステーションには西成と警官、それに精神科の科長である畠山の姿があった。
前田は話の腰を折らないようにとそっと近づき、西成の視界の中で軽く一礼をする。
「おはようございます、西成先生」
「前田さん、おはようございます。ああ、この事件が気になってきたのですね」
「はい、事情はほかの病棟で聞きました」
「そうですか、では話が早いです。こちらがこの事件の担当になった大林警部です」
西成が紹介した警察は、見た目は四十過ぎくらいに見えた。手帳を片手にペンを走らせているが、どことなく落ち着きのない様子だった。
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