【第三話 怪異の復讐劇】

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「じつはね、救急車に同乗していたクラスメートの話によると、昨日の放課後、三人は夜まで学校に残って、霊を呼び寄せる儀式をやっていたんだって」 「霊を呼び寄せる儀式、ですか……?」 まさか霊に体を乗っ取られたのではと一瞬、非科学的な憶測がよぎる。 「精神科の畠山(はたけやま)先生は、集団ヒステリーじゃないかって。それにしても今の若い子ってなに考えているかわからないわぁ」 どうやら被害者は朝一番で専門医の診療を受けていたようだ。佐分利は困惑気味に肩をすくめる。 「ところで、あとのふたりはどうなったんでしょうか」 「厄介な状況だからほかの病院じゃ門前払いだったらしいわ。それでね、結局は三人ともこの病院に運ばれたわけよ」 救急隊は別々の病院に連絡を取ったが断られたらしい。当直医はてんてこまいだったろうが、患者を監視できるシステムがあり、心身の面でサポートできる病院といえば限られているからやむを得ない。 「でも、お互いを接触させるわけにはいかないから、別の病棟の個室に隔離して監視下に置いているの。変な気を起こさないか心配で、スタッフは神経をとがらせているわ」 なるほど、それが朝から物々しい雰囲気の理由なのだと前田は理解した。 モニターの画面を確認すると、三田村薫は鉄格子のベッド上で布団に隠れて丸くなっている。まるでなにかに怯えているようにも見えた。 「佐分利さん、ありがとうございます」 前田は佐分利に礼を言い、ほかの病棟に入院しているふたりを見に行くことにした。 もうひとりは内科の病棟に入院していた。ナースステーションには西成と警官、それに精神科の科長である畠山の姿があった。 前田は話の腰を折らないようにとそっと近づき、西成の視界の中で軽く一礼をする。 「おはようございます、西成先生」 「前田さん、おはようございます。ああ、この事件が気になってきたのですね」 「はい、事情はほかの病棟で聞きました」 「そうですか、では話が早いです。こちらがこの事件の担当になった大林(おおばやし)警部です」 西成が紹介した警察は、見た目は四十過ぎくらいに見えた。手帳を片手にペンを走らせているが、どことなく落ち着きのない様子だった。
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