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入院した三人の女子高生――三田村薫、福山萌、横山里奈は皆、一日のほとんどを布団にくるまったまま過ごしていた。
トイレに行く時も看護師の付き添いを求めており、小動物のようにびくびくとしながら辺りを見回している。顔にはガーゼが貼られ、腕には包帯が巻かれている。見るからに痛々しい。
夕方になると、担任と女子生徒がひとり、見舞いに病院を訪れた。
担任は須崎という名の年配の男性教師だった。西成は須崎に挨拶をする。
「はじめまして、須崎先生。詳しく話を聞かせていただきたいのですが、よろしいでしょうか」
「あっ、ああ、べつに構いませんが……」
須崎は生徒たちに会う前からすでに顔色が悪い。担任教師として不祥事に責任を感じているのだろうが、なにか深刻な事情を抱えているようにも見えた。
「クラスメートがご迷惑をおかけしてすみません。彼女たちと同じクラスの学級委員をしています、今村優奈と言います」
一方、同伴していた女子生徒は、穏やかな振る舞いで前田たちに丁寧に自己紹介し、軽く頭を下げた。前田は彼女の落ち着き払った態度に、しっかりとした印象を受ける。特に、左手首に巻かれた色鮮やかな組紐のミサンガが、彼女の上品さを際立たせていた。
今村優奈は話が長くなりそうだと察したのか、その場で須崎に断りを入れる。
「先生、わたし、授業のノートをみんなに渡してきますね」
そう言って鞄から三冊のキャンパスノートを取り出した。入院している彼女たちのためにクラスメートが準備したようだ。
しかし、今日の彼女たちの様子を見るに、心の傷が癒えるまでは、勉強に集中することは難しいだろうと前田は心配した。
前田は須崎を病棟の面談室に案内する。西成、畠山、そして前田は椅子に腰を下ろして須崎と向かいあう。
彼女たちのクラスの人間関係や出来事を把握することは、原因を突き止める手掛かりになるはずだ。けれど彼女たちが口を開かない以上、周囲の人間に聞き込みをするしかない。
「須崎先生、生徒たちの不幸な事件での心労、お察しいたします」
西成はまず、担任を気遣う言葉をかける。
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