【第三話 怪異の復讐劇】

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「そう言っていただけると救われます。でも、指導者としてほんとうに情けない限りです」 畠山はノートを開き、狼狽する須崎に対して慎重に質問を始める。 「ところでお尋ねしたいのですが、彼女たちはクラスの中でどのような関係だったんですか」 「ああ、放課後はいつも一緒に下校し、休日も街で遊んでいたようです。それくらい仲の良い間柄だったんです」 「ほかの生徒との関係はどうでしょう」 「彼女たち三人は、クラスの中心にいることを好む活発な生徒で、そのため他の生徒たちは彼女たちの影に隠れる形で控えめな態度を取っていました」 どのクラスにも、自分の存在を主張したがる生徒はいるものだ。前田は、彼女たちもそのタイプなのだろうと推測した。 「ほかに、彼女以外のクラスメートで変わった様子はありましたか?」 そう尋ねると須崎の表情がひどく歪んだ。ひたいには不自然にも大粒の汗が浮かぶ。 「どうかされましたか」 「じつは最近、クラスの中で奇妙なことが続いていたんです」 「奇妙なこと?」 「生徒たちが、次々と怪我をしていくんです」 畠山が驚いて目を見開く。 「怪我ですか? それは誰かにやられたという意味ですか」 前田は入院している三人の女子生徒を真っ先に思い浮かべた。互いに刃物で傷つけ合うような狂気じみた生徒だとすれば、ほかの誰かを傷つけてもおかしくない。 けれどその疑念は即刻、否定された。 「いえ、違うんです。小さな手足の擦り傷から始まって、生徒が順番にひとりずつ、怪我を負っていったんです。最初は気にも留めなかったのですが、だんだん重い怪我になっていくようで、数日前には演劇部の生徒が骨折をし、松葉杖で登校していました」 「どういうことでしょう」 「わかりません。ただ、怪我をしたのは自宅だったり部活だったりと人目のあるところですから、誰かのしわざではないようです」 「そうですか。ところで入院した三人は怪我をしたことがあったんでしょうか」 「ああ、そう言われてみますと彼女たちだけは無傷でしたね。でも今回の傷害事件が、ほかの生徒たちの怪我と関係があるとは思えません」
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