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畠山と須崎はふたりとも首をひねっていた。西成はそのやり取りを黙って聞いているのみだ。
前田は三人の女子生徒がいまだに怯えているのを思い出した。それに同じクラスには過去に自殺した生徒がいるという。そして度重なるクラスメートの怪我。
これはもしかすると、『怪異』のしわざなのではないか。誰かがクラスの生徒に呪いをかけているのではないか。そう想像して背筋がぞっと冷たくなる。
須崎への質問を終えたところで畠山はノートを閉じる。
「須崎先生、お時間をくださりありがとうございました」
「いえ、こちらこそ。教育委員会への報告があって、五時までには学校に戻らないといけないんです。また明日来ますので、彼女たちの様子を教えてください」
「わかりました、気を配っておきます」
畠山がそう答えると、須崎は立ち上がりそそくさと面談室を後にした。
「うーむ、前田さんはどう思いますか」
それまで口を閉ざしていた西成が尋ねた。
「生徒たちが次々に怪我をするなんて、なにかおかしいと思いますけど」
「まぁ、若くて活発なら多少の怪我はつきものでしょう。しかし、前田さん、まさかそれがなにか超自然的な力の仕業だとでも考えているのですか?」
「いっ、いえ、そんなことは――」
西成の洞察が図星だったので、前田は一瞬、肩を跳ねさせた。すぐさま否定しようと思ったが、西成の慧眼を誤魔化せるはずはない。
「――そうかもしれないと思っています」
顔を赤らめながらも正直に告白する。
「たしかに、こうも不可解な出来事が続くと、人智を超えたなにかの力を疑いたくなるものです」
西成ですらそう考えてしまうのだと知り、前田は妙な安堵を覚えた。けれどそうした逃げ道の感情は解決の糸口になるはずもないと思い直し、すぐさま思考からふるい落とす。
その時、畠山のポケットで着信音が鳴った。院内PHSでの呼び出しだ。電話を受けた畠山は数言発した後、黙り込んで眉をひそめた。
「はい、すぐにそちらへ向かいます」
その呼び出しは、傷害を受けた生徒のひとりである福山萌が入院している病棟からだった。西成と前田も後を追う。
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