【第三話 怪異の復讐劇】

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一週間にひとつずつのペースで送られており、最初の予言の不幸は程度が軽く、次第に重い病気や怪我となっている。 「これが予言の内容ですね。当たっている確証はあるのですか」 「はい。最後のほうの大きな怪我は学校に記録があったそうです。先ほど担任に電話で確認したので間違いないです」 「なんと……」 予言は三人に対して、まるで運命の輪を回すかのように順番に送られていた。内容を確かめれば確かめるほど、ソーシャルネットワーク上の都市伝説に合致する。 「だけど、なぜか入院した三人だけは含まれていませんね」 西成は怪訝そうに尋ねる。 前田は、『おとぼけ様』が特別な目をかけているのがその三人であるならば、彼女たちにはなにも起こらないのが自然だと考えた。 「たしかにそうですね。でもそこで、おとぼけ様の予知は息をひそめています。ただ、その後はうって変わって奇妙な内容です」 「ほう、どのような内容ですか。どれどれ――」 西成が視線を移動させる。前田も読み進めていくと、具体的な指示を含むメッセージが並んでいた。 『そなたたちが望むのであれば、わたしはそなたたちの前に現れよう』 『放課後の教室の床に六芒星を。闇夜が良いが、空が雲に覆われているならば構わない。カーテンを閉め、限りなく夜の世界に近づけるように』 『六芒星の中央にはロウソクを立て、火を灯すように。数は問わないが、皿の上に立て倒れないように。わたしは淡い橙色の空間が好みである』 『わたしはりんごを食したい。りんごを三つ用意し、三人は六芒星の先端に立ち、誰もいない先端にはりんごを置くように。互い違いになるように配置しなければならない』 『りんごを剥くためのナイフをみっつ、それも同じものを用意するように。ナイフはりんごに垂直に刺して置いておくこと。ただし、わたしは金属に弱い。ナイフを向けてはならない』 その内容は具体的な儀式の段取りについてだった。 彼女たちが儀式をおこなったのは、『おとぼけ様』が彼女たちに自身を呼び出させようとしたからのように思える。そうだとすれば、この傷害事件はほんとうに『怪異』のしわざなのではないかと前田は考えてしまう。 『そして、わたしをこの世に呼び出すための儀式は――……』 そのあとには呪文のような長文が記されていた。そして最後は、こんな言葉で締めくくられていた。 『準備ができたら、三人で声を合わせて呪文を詠唱するように。ただし、この呪文はどこかに書き写す、あるいは誰かに送信した場合は効力が失われ徒労に終わるだろう。心してかかれよ。わたしはそなたたちとともにある』
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