87人が本棚に入れています
本棚に追加
/114ページ
一週間にひとつずつのペースで送られており、最初の予言の不幸は程度が軽く、次第に重い病気や怪我となっている。
「これが予言の内容ですね。当たっている確証はあるのですか」
「はい。最後のほうの大きな怪我は学校に記録があったそうです。先ほど担任に電話で確認したので間違いないです」
「なんと……」
予言は三人に対して、まるで運命の輪を回すかのように順番に送られていた。内容を確かめれば確かめるほど、ソーシャルネットワーク上の都市伝説に合致する。
「だけど、なぜか入院した三人だけは含まれていませんね」
西成は怪訝そうに尋ねる。
前田は、『おとぼけ様』が特別な目をかけているのがその三人であるならば、彼女たちにはなにも起こらないのが自然だと考えた。
「たしかにそうですね。でもそこで、おとぼけ様の予知は息をひそめています。ただ、その後はうって変わって奇妙な内容です」
「ほう、どのような内容ですか。どれどれ――」
西成が視線を移動させる。前田も読み進めていくと、具体的な指示を含むメッセージが並んでいた。
『そなたたちが望むのであれば、わたしはそなたたちの前に現れよう』
『放課後の教室の床に六芒星を。闇夜が良いが、空が雲に覆われているならば構わない。カーテンを閉め、限りなく夜の世界に近づけるように』
『六芒星の中央にはロウソクを立て、火を灯すように。数は問わないが、皿の上に立て倒れないように。わたしは淡い橙色の空間が好みである』
『わたしはりんごを食したい。りんごを三つ用意し、三人は六芒星の先端に立ち、誰もいない先端にはりんごを置くように。互い違いになるように配置しなければならない』
『りんごを剥くためのナイフをみっつ、それも同じものを用意するように。ナイフはりんごに垂直に刺して置いておくこと。ただし、わたしは金属に弱い。ナイフを向けてはならない』
その内容は具体的な儀式の段取りについてだった。
彼女たちが儀式をおこなったのは、『おとぼけ様』が彼女たちに自身を呼び出させようとしたからのように思える。そうだとすれば、この傷害事件はほんとうに『怪異』のしわざなのではないかと前田は考えてしまう。
『そして、わたしをこの世に呼び出すための儀式は――……』
そのあとには呪文のような長文が記されていた。そして最後は、こんな言葉で締めくくられていた。
『準備ができたら、三人で声を合わせて呪文を詠唱するように。ただし、この呪文はどこかに書き写す、あるいは誰かに送信した場合は効力が失われ徒労に終わるだろう。心してかかれよ。わたしはそなたたちとともにある』
最初のコメントを投稿しよう!