【第三話 怪異の復讐劇】

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★ 翌日も彼女たちは怯えるように布団の中で一日を過ごした。そんな彼女たちのもとにふたたび須崎と今村がやってきた。 今村は今日もクラスメートが記したノートを手にして病室に向かう。さすがにもう、『おとぼけ様』のことは書かれていないはずだ。 その間、西成は前田とともに須崎を面談室に呼んでいた。部屋に入るやいなや、すぐさま用件を切り出す。 「須崎先生、昨年の出来事を覚えていますか」 それは生徒が自殺した件を意味している。須崎の顔が真っ青になり大粒の汗が浮き出る。 「えっ、ええ、まあ……辛い経験でしたから……」 そこで西成は須崎の目をじっと見つめて尋ねる。 「桜田葵さんが自殺した原因は、クラスでのいじめではないでしょうか」 学生の自殺といえば、最も多い原因はいじめを主とした「学校問題」だ。理由を想像するのはたやすい。 「その原因は、入院中の三田村薫さん、福山萌さん、横山里奈さんですね」 すると須崎の眼球は小刻みに揺れ、視線が定まらなくなる。いじめの事実に心当たりがあるに違いない。 「学校はその事実を認めていないんですね。認めていれば公式な会見をおこなうはずですから」 須崎はなにも答えなかった。答えられるはずもないのだろう、沈黙は肯定と同義だった。けれど西成は須崎を責めるつもりなど微塵もない。 ただ、が起こることだけは、なんとしても防がなければならない。 「呼び止めてしまいすみませんでした。お聞きしたいことはそれだけですし、それ以上、私が詮索することはなにもありません。本日はどうもありがとうございました」 ふたりは狼狽する須崎を残して部屋を出る。 「前田さん、やっぱり思った通りです。それでは話を進めてください」 「わかりました。任せてください」 緊張した面持ちの前田はスマホを取り出し西成に電話をかける。西成の懐で着信音が鳴り、受けたのを確認してスピーカーモードに設定を変更する。これで西成に前田の会話が届くはずだ。 「それでは行ってまいります」 前田は軽くおじぎをし、ふたたび病棟へと向かった。 そう、この傷害事件を引き起こした本物の『怪異』と対峙するために――。
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