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「主治医の三上先生が事情を説明していますが、聞いた話によると患者の息子は憤慨しているようです。しかも、よりによってマスコミ関係の人間らしいんです。ああっ、この病院が叩かれてしまう……」
事務長は頭を抱え込み、声を震わせてしゃがみ込んだ。脳裏には院長とともに頭を下げる自身の姿が浮かんでいるのだろう。そこで西成はすっくと立ちあがった。
「よし、状況はわかりました。それでは実際に現場を見てみましょう。前田さんもついてきてください」
「はっ、はい!」
西成は事故現場である病棟に足を運ぶようだ。前田は記録係としてボードを持ち、早足で西成の後を追いかけた。前田の知る限り、西成が解決できなかった医療トラブルは皆無である。それどころか医療訴訟で敗訴を喫したことは一度たりともないと聞いていた。
けれど今回はたやすく解決できる問題ではないと、前田はひどく不安に駆られた。
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