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二人が交わした合図を思い出さないままアパートに戻る。玄関前の、手書きの表札が見えてしまう。
葉山翔 丸内夏乃
「翔くんの文字デカすぎて、私のフルネーム小さくなったんだ」
思い出ばかり思い出して前へ進めない。婚約だってなくなった。
生きているのに、身体が鉛みたいに重くて、やる気がしない。ただその日のために過ごしているだけの日々。
「ただいま」
彼がこの世からいなくなっても、ただいまと行ってきますは言うようにしている。
部屋を施錠し周囲を伺う。今朝見たかげくんはいなかった。
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