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翔くん
真っ暗な部屋が好きな私。常夜灯がいいと彼と口喧嘩した日々が懐かしい。ダブルベッドにしたのに、隣には愛した人がいない。
「ねぇ、翔くん。怖いものに立ち向かうからさ、出てきてよ。いるなら合図してよ?」
婚約者だった葉山翔を亡くしてから、三ヶ月が経つ。
『夏乃さん、急なことで本当にごめんなさい』
翔くんの両親は何も悪くない。まさかが起きただけ。
『謝らないでください。私は大丈夫ですから』
通夜の席で強がっていた。大丈夫ですからなんて言って本当は、ポロポロ泣きたかった。喪服を着ていたからか強くあろうとして、火葬場まで行っても泣けなかったのに。
「翔くん、私・・・泣けばよかったのかな」
周囲に同情されるくらい棺にすがりついて泣きわめけば、三ヶ月経ったら前へと進めたのかな?
衣替えした寝具のマットには翔くんのかおりは残っていない。いつも使う柔軟剤のかおりがするだけ。
ねぇ、涙が溢れてとまらないよ
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